食べる

青森の老舗ラーメン店「55年目の事件」 父から継いだだしを変更

店主の秋谷伸吾さん

店主の秋谷伸吾さん

  • 0

  •  

 青森の「らーめんはちもり」(青森市問屋町、TEL 017-752-9215)が5月31日、提供するラーメンのだしを変えた。

らーめんはちもりのチャーシューめん

[広告]

 1968(昭和43)年創業で、現店主・秋谷伸吾さんの両親が始めた同店。屋台ラーメンを提供していた経験もあり、前店主で秋谷さんの父・清さんはだしにこだわりがあったという。秋谷さんは「父はよく『なかなかいい煮干しが手に入らない』と漏らすことが多かったが、境港(鳥取県)の煮干しは特に気に入っていた」と振り返る。

 2011(平成23)年から跡を継いだ秋谷さん。3年くらい前から境港の煮干しが毎回安定して仕入れることができるようになり、安定しただしで提供できるようになっていたが、今年4月に入り突然、漁業関係者や加工会社から「煮干しになるイワシが取れない」という連絡が入った。「ラーメンが提供できなくなるのではと不安を覚えるようになった」と振り返る。

 「閉店の選択も頭をよぎった」と秋谷さん。いつ手に入るか分からない煮干しに期待しても解決にはつながらないと、4月中旬、だしの変更を決断。秋谷さんのスープ開発が始まった。当初作っただしは、食べた家族やスタッフから「はちもりらしくない」「本当でこれでいいの?」などの厳しい意見があり、試行錯誤を繰り返したという。

 秋谷さんにとってだしの開発は初めての経験だった。2代目店主として跡を継ぐ前はホテルマンで、料理の経験はほぼない。「父からレシピを教えられた際、だしは絶対のものだから変える必要がないと言われた」と秋谷さん。「完成しただしに自信はあったが、判断するのはお客さま。提供するまで不安だった」とも。

 提供は5月31日に始めたが、その1週間前から「55年目の大事件」という告知を店内に貼りだした。秋谷さんは「お客さまに教えないことは性分に合わない。『楽しみにしている』といった声があり逆にプレッシャーになったが、今はリピートしてくれる人や常連客が『おいしい』と喜んでくれたことがうれしい」と笑顔を見せる。

 だしを変えたことについて秋谷さんは「父から変えるなと言われただしだったが、変えたことで気持ちが楽になった。ようやく自分の店になったのかもしれない」と話す。

 営業時間は11時~15時。日曜・月曜定休。

青森経済新聞VOTE

青森経済新聞に期待する記事は?

エリア一覧
北海道・東北
関東
東京23区
東京・多摩
中部
近畿
中国・四国
九州
海外
セレクト
動画ニュース